【NEWS】ペロブスカイト関連ニュース〜2022年9月上旬

一般共用施設への設置計画としては世界初の事例に

積水化学工業は2022年8月、西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)が開業を目指す「うめきた(大阪)地下駅」にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を提供・設置すると発表しました。JR西日本によると、一般共用施設への設置計画としては世界初の事例になるといいます。

うめきた(大阪)駅全体での二酸化炭素排出量の削減効果

参照:ペロブスカイト太陽電池を世界初導入、JR西日本が「うめきた」新駅に
参照:eco ステーション うめきた(大阪)駅の環境の取り組み

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なぜ日本の性教育は遅れているのか(5) 最終回〜国際的なガイドラインと比較

前回の記事まで、日本における性教育の歴史と国際的な性教育の歴史を個別にお伝えしましたが、今回はまとめとして、「国際セクシャリティ教育ガイドライン」の日本語版(2017年作成)と、2021年に改定された東京都教育委員会の「性教育の手引き」を比較したいと思います。

国際セクシャリティ教育ガイドライン」の日本語版(2017年作成)について

2009年に「国際セクシャリティ教育ガイダンス」を国連のユネスコが発行し、その日本語版を2017年に日本の性教育者たちが関わって作成したものです。なお、英語版は2019年に第2版が出ています。

「国際セクシャリティ教育ガイダンス」の特徴としては以下です。

  • 5才〜8才、9才〜12才、12才〜15才、15才〜18才以上の4つにグループ分け
  • 包摂、尊敬、平等、共感、責任、相互性などの価値を採用
  • ジェンダー平等を推進することは若者のせいの健康とウェルビーイング(Well-Being:幸福)にとって重要

ガイドラインのキーコンセプト

さらに8つのキーコンセプトがあります。

  1. 人間関係
  2. 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
  3. ジェンダーの理解
  4. 暴力と安全確保
  5. 健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
  6. 人間のからだと発達
  7. セクシュアリティと性的行動
  8. 性と生殖に関する健康

以下、ガイドラインの内容を引用しながら説明します。

これらのキーコンセプトは、さらに2つから5つのトピックに分かれている。年齢グループごとに、キーアイデアと、知識、態度、スキルの高徳 とした学習目標が設定されています。

示されている学習目標は、地域レベルのカリキュラム開発者によって解釈され、地域的文脈や既存の国・地域のスタンダードや枠組みに基づいてその重要性がはかられるます。

ガイダンスは、自主的なもので強制されるものではなく、国際的な科学的根拠や実践に基づいており、セクシュアリティ教育が実施されているそれぞれの国の状況の多様性を認めている。
(中略)
ほとんどの専門家は、子どもや若者が、より早期に、より包括的にセクシュアリティや性的健康に関する情報を求め、必要としていることを確信している。

「国際セクシャリティ教育ガイダンス」日本語版

簡単な図にまとめると、以下のようになります。

国際セクシュアリティ教育ガイダンスのキーコンセプト

このように国際的なガイダンスではあるものの、地域や状況に応じて適用するよう書いてあります。では、より具体的な「トピック」を見ていきましょう。

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なぜ日本の性教育は遅れているのか(4) 〜国際的な動き

では、これまでと打って変わって、日本国外での国際的な「性教育に関する動き」を見ていきましょう。これまで1960年代から1970年代にかけて、さまざまな性解放運動が欧米を中心に起きました。

加えて、ヒッピー文化やカウンターカルチャーなどの動きも加わり、一転して1980年代はHIV/AIDSパニックが世界中で起こることになります。

いまでは、感染経路やメカニズム、治療方法などが確立している病気ですが、発見当初、この奇病の患者のほとんどが男性の同性愛者だったことから、さまざまな偏見や差別、憶測が飛び交いました。

参考:松岡正剛の千夜千冊 1078夜「エイズ」

リプロダクティブヘルス/ライツの採択

そうしたなか、1994年エジプトのカイロでは「国際人口開発会議」が開催されました。リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が提唱され、翌年1995年の北京会議(第4回世界女性会議)で採択されます。

リプロダクティブヘルスライツ

リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、生殖年齢にある男女*のみならず、思春期以降の誰もが、生涯にわたる性と生殖に関する権利が保障されるべきであり、子どもを持たない選択も含め、生殖に関して自己決定できる権利を指します。また、具体的施策も示されています。

引用:「性教育はどうして必要なんだろう?」(浅井春夫共著 大月書店 )
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なぜ日本の性教育は遅れているのか(3) ~2000年以降、そして政界と性教育について

おさらい

性教育の歴史を1970年ぐらいから2000年ぐらいまで追ってきました。簡単に振り返っておくと、以下のようなことが1990年代の「ムード」でした。

  • 1992年 性教育元年 といわれるように小学生から「性」を教えることになった(HIV/AIDSパニックへの教訓として)
  • 1997年 男女共同参画審議会が恒久的に設置される。保守派政治家が性教育のバックラッシュを進める
  • 2003年 七生養護学校事件が起こる(性教育バッシングの象徴的な事件)

ここであらためて、みなさんに覚えておいてほしいことは、「教育」は「政局」に大きく左右される、ということです。逆に言えば、「政局がどうなろうと、変わらない知力を身につけておきたい」ですね。

誰でも教育を受けられる権利
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なぜ日本の性教育は遅れているのか(2) ~1970年代から2000年ぐらいまで

前回の記事では、日本の性教育が実際に遅れていることを説明しました。では、なぜ遅れているのかという原因については、2003年の「七生養護学校事件(ななおようごがっこうじけん:東京都日野市、現東京都立七生特別支援学校)」や、2018年に東京都足立区の公立中学校で行われた性教育の授業に対する都議の問題視および調査申し入れなどが、日本の性教育を遅らせる一因になった、という意見をよくみかけます。

くわえて、60年代〜70年代世界中を席巻した性解放運動に続き、HIV/AIDS(エイズ)パニックによる感染防止のために性交時に気をつけなければいけないこと(たとえば避妊具をつけるなど)を教育する機会の要請や、女性の望まぬ妊娠や中絶の増加なども原因でした。

避妊具を教え、正しい使用方法を教えることは不必要なことなのか

ですが、2022年の8月時点から振り返ってみると、われわれが思うに「政権与党(つまり自民党)と文部科学大臣の考え方が世界的に遅れている」ということ、そしてなによりも、自民党が地方でも多くの議席を占めていることもあり、地方議会で反共・極右の意見が多いということもあり、地方自治体の長や教育委員会までもが、忖度(そんたく)して、自民党中央の意見に、右倣えしているという状況があります。

【参考記事】2022.8.12付FLASH記事
「安倍元首相死去で学校に「半旗掲揚」求めた自治体が続々「忖度が蔓延している」明石市長がズバリ」

この記事では、それぞれ整理しつつ、2000年あたりまで詳しく見ていきましょう。

L.A.カーケンダールが果たした日本の性教育への影響
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12歳から考える知的生存戦略[サバイバル~]