日本の性教育は、ほんとうに遅れているのでしょうか、と疑問に思う方もいるでしょう。
しかし、答えは残念ながらYesです。
日本の性教育は世界的に遅れている?
以前、東京都教育委員会が平成30年(2018年)に中学校における性教育の実施状況を調査した結果を掲載しました。
これをみると、公立中学校の第一学年から第三学年まで、年に10時間までしか性教育を実施していないと回答した学校はほぼ50%でした。夏休みや春休みなどのお休みを考慮すると、およそ1カ月に1時間ほどの性教育に関する授業しかしないという学校がほぼ半数ということになります。
ジェンダーギャップ指数だけで測れない日本の性教育の遅れ
よく敷衍しているデータで、「ジェンダーギャップ指数」というものがあります(世界経済フォーラム(WEF)による調査)。2021年度に調査対象となった156カ国中、日本は120位でした。
詳しい定義は、男女共同参画局のWebを見ていただきたいのですが、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータで、完全平等か完全不平等化を評価しています。
もちろん性教育によって、上記の王なジェンダーギャップは埋まるのですが、「経済」や「政治」は、性教育にあまり関係ないような気がします。
それでは性教育の進んでいる、遅れていることを客観的に判断するには、どんなデータを使えばいいのでしょうか?
プランユースグループが2021年に行なった国内の「ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書」は、非常に大規模を対象としており、示唆に富んでいます。
しかし、これを読んでも、世界における日本の性教育の順位はわかりません。
そう。
ぶっちゃけ、そのようなランキングはないんです。
でも、おもしろいデータと考察がユニセフ(UNICEF:国際協力基金)から2020年に出ています。それが『レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か(原題:Worlds of Influence: Understanding what shapes child well-being in rich countries)』というものです。
日本人の子どもの精神的幸福度は超低い
上記の解説のページがおもしろいので、ぜひ見てください。われわれが注目したのは下記です。
日本の子供は・・・
- 幸福度(結果)の総合順位で20位(38カ国中*)
- 分野ごとの内訳をみると、両極端な結果が混在する「パラドックス」ともいえる結果
- 身体的健康は1位
- 精神的幸福度は37位(ほぼ最下位)
- スキルは27位。その内訳をみると、2つの指標の順位が両極端
- 数学・読解力はトップ5に入る
- 社会的スキルは2番目に低い(最も低いのはチリ)
*本報告書は経済協力開発機構(OECD)または欧州連合(EU)に加盟する国々(41カ国)を対象としています。指標によってデータのある国の数が異なり、総合順位表には、一定数のデータがある国のみが含まれています。
くわえて、
日本の子どもの貧困率は約18%*で、ちょうど平均くらいでしたが、日本はGDPが高く失業率は低く、とても豊かな国です。それを考えれば、平均よりもっと下げることができるでしょう。子どもの貧困は、子どもの幸福度の結果に影響するため重要です。子ども時代の貧困が、学力、肥満、うつ状態等に蓄積して現れることが、イギリスの子どもの追跡調査からも示されています。
引用:子供の幸福の条件(UNICEF)
このように、5人に1人が貧困であることと、精神的幸福度が低いことは関係あるでしょうが、そのことと「性教育」はあまり関係ないように思う人は多いかもしれませんが、違うのです。
いま世界では、「Well-being(ウェルビーイング)」=「幸福」を子どもの頃から高めることを教育の目的としており、そのうちのひとつとして「性教育」が位置付けられているのです。
それをふまえて、次は現在の日本の性教育のざっとした歴史の現在の事情をお伝えしましょう。